2010年7月20日 何故デニーズは中国で上手くいっていないのか。

2009年7月セブン&アイ・フードシステムズは、客観的に中国版デニーズと見られるAllDay’s(オールデイズ)を中国進出の第一歩として、北京の大望路に一号店を出店している。
決算報告書などでは詳細が不明なため確実な事は言いにくいが、そのチャレンジはまだ決して上手くいっているとは言えない状況がうかがい知れる。
と言うのは、大望路店が混雑している状況は一度たりとも目にされた事はなく、挙句深夜に店を訪れると余りの閑散ぶりに驚くばかりか、店員も寝ている有様である。
こんな状況を本社は掴んでいるのだろうか。
大望路付近は、万達や建外SOHOのすぐ目の前で、最近では新光天地などの高級百貨店も並び始め、人の流れとしては日々増えているような場所である。
しかし、何故このような状態に陥っているのか、現地で「日本企業がやってしまいがちな戦略ミス」について纏めてみたいと思う。
1.エリア戦略のミス
上記のような状況にも関わらず、デニーズ社は2010年7月に建外SOHOに二号店を出店した。
これは一号店から、直線距離にして1㎞も離れていない場所である。あえてこの場所に出店したのはドミナント戦略による知名度や認知度の向上が伺えるが(それにしては1年に1店舗ペースは遅すぎるが…)、ここに1つの間違いが潜んでいる。
それは、マーケット規模の感覚値を読み間違っているのではないか?という事である。
北京の人口は約1600万人であり、東京よりも若干多いものの、北京市の広大な土地の事を考えれば自ずと分かる通り、その人口密度は薄い。Wikipediaによれば、人口密度は東京の6分の1程度である。
往々にして中国の人口の多さがマーケットの規模の大きさと勘違いしがちであるが、商圏の広さは万国共通である。特に日常生活に隣接する飲食業であれば尚更である。結果としてこの2店舗は単なる顧客の食い合いをするだけで、良い成果は産めないと予想できる。
また、一号店と二号店のある場所は、基本的にはビジネスエリアとしての傾向が強い。
24時間営業も、ほとんど意味をなさない場所である(だから暇で店員も寝てしまう)
人件費が安いから大丈夫?
ノンノン。
ご存知の通り、都市部の人件費はどんどん上がっている。
相対的には、まだ日本よりも人件費は低いが、得られる売上も日本よりも低い。
不動産価格も急激に上昇している。
結果としては日本よりも商売をするのは難しい事が多いのが中国なのだ。
結局、課題抽出の間違いを犯している。中国の特性を理解せず、何故上手くいかないのかという理由を読み間違えてしまっているのである。
2.ローカライズ戦略のミス
国を渡って事業を展開する際に、日本の良さを持っていきたいという想いを抱きがちであり、それ自体は決して悪い発想ではないと思う。特に中国には、日本にあって中国にはない素晴らしいものがまだまだ多くあるのも事実である。ファミリーレストランという業態もそうである。
しかし、日本人が主食を昆虫に変化させるのが難しい(事実上不可能)のと同じように、それぞれの国の食文化に合わせてメニューの内容をローカライズする必要は高いはずである。
ようやく最近になってメニューの改定に動き始めてはいるものの、彼らがメインで売り出したい品が中国の食文化にはあっていないのは、大きな問題である。
彼らは、メインとしてハンバーグを推しているのだが、中国では元々挽肉は下級層の食べ物であるという意識が強い。それは、挽肉には何の肉が入っているか分からないという考えがあるからである。
例えば、最近になってようやく高級な小籠包が受け入れられ始めているが、元々は庶民の食べ物だった事は忘れてはいけないし、上記の理由から出店場所や価格設定には細心の注意を払う必要がある。
しかし、現在は全てが中途半端であり、あらためてターゲット層を再設定する必要が高いのは間違いないと思われる。
※価格帯としてはそれなりにお金を持っている人でなければ若干高く、かと言って富裕層が来るような価格帯ではなく、メニュー構成でなければ店舗内装でもない。
ここでも言えるのは、日本の店舗の延長として考えるのではなく、中国の特性を理解した戦術を取るべきである。

少なくとも、出店場所などを決めるにあたっても、利害関係の一切ない多くの現地人から地域の持つ特性をヒアリングし、不動産会社の勧めるような場所を選ぶべきではない(AllDay’sの話とは関係なく。ただし二号店はまだしも、一号店は「なんでここなの?」と言わざるを得ない場所であるのも、また事実)
例えば、二年後にフォーカスして中途半端な設定をするというのも、まぁそれもいいと思うけれど、中国というマーケットは目の前の実利を取りつつ変化に付いていく気概を持って挑むべき。一度現地からそっぽ向かれたら、取り返すのは本当に厳しい。
多くの日本企業を見ていて痛感する事だが、中国という国をいまだに下に見ている傾向が強い。しかし、何度も訪問している人なら気づいている通り、実際は(都市部に関しては)すでに経済的に抜かれている事実とは、きちんと向き合わなければいけないと思う。
相手が上なのだ。自分たちのやり方がベストだと考えてはいけない。
粘り腰の交渉と日本以上のスピード感を求められる中国というビックマーケットは、決して甘くない。

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