Story
<株式会社アイディール 設立から現在までのStory>
僕が起業を志したのは若いベンチャー経営者のように、子供の頃から描いていただとか、学生時代に友人と起業済みだとか、分かりやすく心躍るような熱いストーリーは、恐らく相対的にも少ないでしょうし、むしろゼロに近いんじゃないかと思います。
起業までに10年間の社会人生活を通じて、結果としてこの形しかないという考えの集約 -ある意味では諦めの境地でもあり- により、今に至ります。
たまたま僕は恵まれていて、社会に出始めた早い段階でモバイルインターネットの業界に入る事が出来、始まりはメディア。次に大手家電メーカーの子会社にあたるソリューションの会社でセールスプロモーションの領域まで幅広く経験した後、CRM系の企業で役員を経てコンテンツの会社を立ち上げたというのが大きな流れで、起業までに同じ業界の中で幅広い経験を積むことが出来ました。
i-modeが始まる1年前からモバイルでのメディアビジネスに携わる経験を持っている人間はかなり稀有だと思いますが、業界や主戦場の生まれ変わりやあらゆる企業の登場と撤退をこの目で見てきました。
創業時の事業は、まだガラケーでのデジタルコンテンツ配信が盛り上がっている頃だったため、そこに向けてデコメの受託制作から開始しました。
そして、当時ランキング上位のコンテンツプロバイダー(配信会社)様たちとお付き合いさせて頂きながら、社内のスタッフが増えるに連れて制作出来るコンテンツの幅を広げてきました。
今のコンテンツ制作の主戦場は当然スマートフォンに移行しており、当社でもこれに関連した制作を数多くこなしています。
その頃のコンテンツプロバイダー各社は通信キャリアのネットワーク内でサイトの運営を行っており、そこに入るためには厳しい審査基準がありました。
そのため毎月大量にコンテンツを更新しなければならないという縛りの中、クオリティは高いまま価格を下げたいという思いが強く存在しており、当社は制作ラインを中国で持ち、日本で生産管理を行う事で「安く、クオリティを担保する。」という課題に応えていました。
システム開発でアジア圏などの労働力を活用したオフショアビジネスは当然当時からありましたが、我々が珍しかったのはそれをデザイン領域に持ってきた事でした。
「目に見えて善し悪しが分かりやすい」デザイン領域の仕事を、海を渡って行うのは文化の違いなどもあって非常に難しい側面がありましたが、結果としてデザイナーに丸投げ出来ない=生産管理の重要性に気づく。といった現在のアイディールでも非常に大事にしている発想が産まれたのは1つの良かった面でもあります。
こうやってクライアント様からの受託という形で事業を回すのと並行して、一部の企業様とは当社がコンテンツの制作のみを行い、サイトの収益をレベニューシェア(利益分配)するなど自社サービスの足掛かりを探してきました。
その後、いくつかのメディアやアプリなどを立ち上げ、オンラインから派生させようとキャラクターのライツビジネスを始めるなどの取り組みを行ってきましたが、いまだ自社サービスとして強い物が創り出せていないのは課題でもあります。
2012年には縁あって女性向けファッションEコマースの事業を譲り受け、月間で数十万円だった売上を数百万円まで伸ばしてきましたが、低い利益率をカバー出来るほどの売上に達する事が出来ず、平行して行っていたアプリの事業に関してもヒットを出すことが出来ず、2014年の頭にこの2事業から撤退する事になりました。
いくつかの事業から撤退したにも関わらず我々がやるべき事に注力した結果、2015年期はV字回復し、過去最高の売上・利益を出せる事が11月時点ですでに確定しています。
冒頭にも表記しましたが、改めて、何故僕が起業をしたのか。
元々僕はやりたい事が好きなようにやれるならサラリーマンでも全然良くて、社長職という物へのこだわりや想いはありませんでした。
ある時期においてはそれなりに自由に任せて貰えた時期もあり、一従業員として働いている事への満足度は高かったのですが、環境の変化と共にそういう事は当たり前の事ながらなかなか許されない状況になり、当時クライアント様だった会社からのお誘いを受けて役員になった際「これで自由の翼を得た」と思っていましたが、結局トップでない限り本当の意味でのその環境は掴めないんだな、と感じ、自らリスクを取るという選択をしました。
ある意味では諦めの境地からの起業でもありました。
結局きっかけになったのは、やりたいようにやりたい事がやれるかどうか。
この1点でした。
それと、僕は日本を愛しつつ海外指向が強く、海外と仕事がしたいだとか、日本の良い物を世界に持っていくような事がしたいと若い頃から思っていて、そういう意味では受託という仕事自体はいつかきっと離れて、海外に向けた自社サービスを中心にしていくんだろうと思っていました。
しかし、あらゆる事業にチャレンジする中で、結局苦しい2年間からアイディールを救ったのは他ならぬ僕がいつか辞めるだろうと思っていた受託の事業だった訳です。
某大手家電メーカーの子会社に勤めていた頃、セールスプロモーションの仕事が誰の役に立っているのか不満に思う事が多々ありました。
せめて現場の人と熱いディスカッションをした形で進んでいけば、少なくとも目の前の人の役に立っている事は分かります。しかし企業という不条理な組織は時としてトップダウンという形で望まぬ形で企画が固まる事があり、これが不満の種でした。
ただ、今思えばこれは結局自分自身が本当に価値のある仕事が出来ていなかったからこそ産まれていた事なんだと感じています。
改めてアイディールの受託について考えると、お取引頂いているクライアント企業様は一流の会社ばかり。中にはアドバイザリーとして僕らの考え方やノウハウを受け入れてくださる会社様もあり、なんて恵まれた環境なんだろうと感じます。
そう。
我々はもっとクライアント企業様が望むような、それ以上の、「価値」にならなければいけない。
そういう根源的な発想をより固めるために、会社の理念についても見直す事にして、新たに「価値を創る。」という一言にまとめる事にしました。従来の「サービスを産もう」という意志の表れだった理念からより根源的な言葉に集約されましたが、これは8年間経営をしてきた結果、今最も自分自身も腹落ち出来る言葉だと思っています。
クライアントやユーザー、パートナーにどんな価値を創れるのかを模索し、それを実現する努力を繰り返していく事。それが結果として自分たちの価値になるんだと。
世界を変えたいだなんて大それた事は言わない。だけど価値がある事をして、誰かのプラスになる事をしていきたい。
2年間の苦しい時期を超えて、今期のアイディールは第二創業と言っても過言ではないと思っています。9年目にしてようやく新卒の子を迎え入れる準備も始める事が出来ました。
今までには無かった新たな動きは不安を感じる事もあるし、そういう意志決定は大きな責任が伴う事でもあると思います。
そういう身が引き締まるような気持ちの中、我々が提供できる価値は何なのかという事ときちんと向き合い、クライアントやパートナー、ユーザーに価値を創っていきたいと思っています。
創業からの8年間は本当にあっという間で、この短い期間の中でも業界や主戦場の生まれ変わりやあらゆる企業の登場と撤退をこの目で見てきました。
アイディールは存続する会社であり続けられるよう、本当の意味での価値を創れる企業になっていけるよう邁進していきたいと考えております。
2014年 初冬
株式会社アイディール 代表取締役 小林淳