日本企業が「海を渡る」という意味を間違えないための重要なポイントの押さえ方。
前回のコラム(当社コラム: 中国進出における現地企業の理解の仕方のポイント )でも触れさせて頂きましたが、日本企業が海外に進出する際によく見られるのは情報収集と同時にリスクを査定し、そのリスクを探し尽くすことに精力を使いすぎるという事です。
特に大手企業の場合は方針の決定までに社内外の当事者やステークホルダーなどの根回しも必要で、プロジェクトそのもののを進めるかどうかの意思決定にも非常に時間がかかるという背景があります。
◎中国の市場環境の変化について
今の中国ビジネスにおける市場環境は、日本では想像できないほどスピードが速いのは疑いようのない事実で、ある日テレビで放映された商品が1週間後には深センの工場でモックが製造されて同等の機能が実現できる所まで進んでしまっていたというのも、決して笑い話でもなんでもありません。
例えば、中国ECの世界でも2016年には「動画コマース」が先進的とされていましたが、2017年にはすでにそれにとって変わって「ライブコマース」が先進的とされるように変わっています。
事実この移り変わりで生まれている商業的価値を見ただけでも、確実に新しい販売手法に顧客が集まっていることが分かります。
グローバル時代においては情報の拡散はほぼ一瞬になりました。
このように「機をどう活かすか」という課題と向き合うのは日本の企業でも必須になっているはずです。
そのためには現場主義によるフレキシブルな意思決定の仕組みをもってして、動いてみながら問題点をリアルタイムに潰していくような方策が非常に重要になります。
中国も法治国家なので、中国で物を売るためには役所での許認可は当然必要になります。
しかし本音と建前のダブルスタンダードが当たり前の中国では役人個人の裁量権が大きいのもまた事実で、1つの許認可に対しても定型通り進めようとすると何故か壁に当たってしまって進まないことがあります。
このような場合、多くの日本企業は「中国は許認可を通すことが出来ない国だ」と勘違いしてしまうことがあるのですが、そもそも別の窓口に申請するだけで通過したり、拒絶理由になっている書類の一部をその場で書き換えてすぐに提出し交渉することで通過させるというパワープレイも非常に重要であったりします。
これは繰り返しになりますが、本音と建前のダブルスタンダードの中で、申請が通らずに営業活動を始められないくらいならば、何とかして申請を通して、それに沿って営業活動をカスタマイズしていくといった行動をとった方が良いだろうという考え方な訳です。
そのため中国での営業活動においては、現地のパートナー企業などに「一定の裁量を与える」ことが出来なければ、基本的にはうまくいく事はあり得ません。
しかし日本の大手企業がこの進め方を何も考えずに受け入れることはナンセンスでもあります。なんでも自由にやらせれば良いという事ではありません。
これは中国企業との交渉時にも非常に重要な考え方ですが、自分たちが絶対に譲れないポイントを決めておくということは忘れないでください。
賃貸物件を探している時に、「日当たりも間取りも、トイレ風呂別で、駅からも近くて2階以上で…」といった形で理想を語っても、何かを諦めたご経験があると思います。
これと同じで、全てのリスクを排除することは出来ないけれど、これだけは徹底的に守ろうという物を決めておくという事です。
- モノ作りならば最終的には身体への危害を避けることではないでしょうか。
- 会社としてのダメージを考えるならば、別法人化ではないでしょうか。
- 商品のクオリティならば徹底した製造コントロールではないでしょうか。
ぜひここでは頭を絞ってください。
そして、こういったポイントを決めた後は、以下のように進めていく事が良いと思います。
◎ブランディング前のリスク排除プランについて
1.自社商品のカテゴリにおける製造や販売の経験者に話を聞く。
(シンプルで、当たり前のことです。製造を委託しているOEMメーカー様のご担当でも良いかもしれません)
2.自社商品のカテゴリの商品をランキング10番目くらいまで全て買う。
(その商品にはどのような注意書き表記があるか全て調べることで先人たちの事例から必要なことが全て明るみに出せる訳です。また大手メーカーなどの商品ならば、なお事例としては非常に良いと思います。どう買ったら良いか分からなければ、当社にご連絡ください。すぐに対応しますよ!)
3.疑問があれば役人にも聞く。
(冷たく対応されることが多いのも事実ですが(笑)、少なくとも最終的に許認可などを意思決定する方に必要なルールを聞いておくことも大事なことです)
リスクを徹底的に排除したい気持ちは非常に理解できることでもありますが、そもそも100%のリスクの排除は不可能なことですので、「何も起こさないこと」が主目的になっているような海外進出の仕方ではグローバル時代に勝つことは難しいのは誰の目で見ても明らかです。
海を渡るという事は、そのリスクを超えた先にある「まったく新しい世界の創造」であると思います。
本当に素晴らしい商品を作れる日本だからこそ、徹底したチャレンジをしていって欲しいと切に願うのみです。