中国進出における現地企業の理解のポイント

当コラムでは中国でのブランディング手法を始めとして、越境ECやマーケティング、そして中国人消費者の心理などについて書いて参りました。
中国で商品販売を行う際には、このように現地の特徴を良く知り、適した手法をきちんと取るが重要であると共に、現地企業の考え方を良く知った上でどのようにパートナーシップを取っていくかについて戦略的に考える事がまた非常に重要であると言えます。

 

まず日本企業と中国企業の違いとしては、仕事の進め方が大きく異なる事が挙げられます。

それはスピード感の大きな違いとして出る事もあり、このグローバル化が進んだ現代においてははっきりと正否が出るようになってきています。

 

日本企業は良く言えば思慮深く慎重であると表現されるかもしれませんが、打ち合わせなどで盛り上がったとしてもその後の進行は「まずは本社の決済を」「まずは機密保持契約書を」といった話になることが多く、そのスピード感に中国企業側がやきもきするというケースが良く見られます。

事実、担当者が出張ベースで日本から来ている場合、次に会えるのが数ヵ月後であるといった事もざらにあり、なかなか思うように仕事が進んでいかないという事も(これは中国企業側のグチとして)聞くことが多くあります。

 

特に合意内容を詰める初期段階においてもその仕事の進め方の違いで日本企業が交渉負けしてしまっているケースも見かける事があります。

日本企業の場合はまずは「上手くいかなかったケースを最大限想定」した合意内容を出す傾向があり、逆に中国企業は「上手くいくことだけを想定」した合意内容を出す傾向があります。

このようにそもそもの文化が異なると、基本合意まで詰めていく事がいかに難しいかという事も想像が容易いかと思いますが、実は重要なのはさらにこの後です。

 

ようやく基本合意が固まって日本企業がホッとした瞬間に、中国企業からは合意内容の見直しの依頼が入り日本企業がバタバタと振り回されるという話をよく聞くと思います(世界的な大企業ですら!最後の最後に振り回されている姿を見かけた事があるはずです)

このような状況が起きた際に日本側から「やっぱり中国は信用できない」などのネガティブな意見に繋がってしまう事もありますが、これもやはりシンプルに「文化の違い」なのです。

 

基本合意ではまだ「完全に契約が締結された訳ではない」のですが、日本企業側では「この内容が最終」だと考えるのと同時に中国企業側では「もっとより良い基本合意を目指したい」と考えるかどうかだけの違いなのです。

ですので中国企業側の考え方を理解した上で、基本合意時点で「どこまで詰めて」、その後「何を詰めていくか」を戦略的に切り分けておくと非常にスムーズに契約に進んでいくことが出来ると考えていただけると良いかと思います。

 

また、こういった仕事の進め方における文化の違いだけならまだしも、中国に進出を目指す日本企業の中には日本の法律や進め方を強要してくる所もあるのですが、逆に中国企業が日本に進出する際に「中国の決まりではこうなっている」と言われると、ここは日本だから…と考えるはずです。

逆もまた真なりと考え、日本企業が中国で成功するためには中国での仕事の進め方をきちんと覚えなければいけないはずなのです。

 

例えばUSB充電が必要な家電を中国で一般貿易として販売許可を取るためには電源回りで3Cの許可を取る必要がありますが、この申請ハードルが高い事で有名です。しかし、いっそ充電器は購入者の手持ちの物を使ってもらうようにメッセージを伝えた上で、そもそもセットとして内包しないという対応も考えられる訳です。

本音と建前がダブルスタンダードなのが通例とも言える中国において、日本の法律や商慣習に沿って正しくコトを進めようとして結局何も始まらないくらいならば、とにかく進めるべき事を進める事こそが最も重要なのです。

中国でうまくいっている日本企業を見るとこのように現地企業の特徴を良くつかんで良いパートナーシップを取っている事が多く、このように日本と中国の違いについてよりご理解いただけると皆様の中国進出に向けても参考になるかなと思っております。