桜を見に来た中国人インバウンド客に向けて、本来やるべきブランディングとは?

今年も日本では桜の季節を迎えていますが、例年この時期は中国人インバウンド客に人気のあるシーズンでもあることはよく知られるようになってきました。

 

中国トレンドEXPRESSの調査によれば、2013年から2015年で中国国内における日本の花見関連の報道件数は4倍に増えているといったデータも発表されており、その関心の高さが伺えます。

 

このようにメディアの露出が増えれば当然SNS上での投稿も増え、一連の情報拡散は、インバウンドの訴求として日本への観光客を増やすだけでなく、関連した商品の購買活動においても密接な関わりがあることは意外と見落としがちなことでもあったりします。

 

そもそも中国のメディアが産んだ、日本へのインバウンドおよび商品ブランディングの最も有名な事例と言えば、2008年に中国で公開された映画「狙った恋の落とし方(原題「非誠勿擾」監督「フォン・シャオガン」)」で間違いないと思います。

日本でも著名なビビアン・スーさんらが出演したこの映画は北海道の東部を舞台にしており、映画のヒットと共に旅行先として北海道の人気を非常に高くしただけでなく、映画内で使用されたスバルのアウトバックもその後人気になるなど、メディアコンテンツ内でプロモーションされる映像内広告(プロダクトプレイスメント)の手法として大成功の一例としてよく知られています。

 

すでに10年以上も前のコンテンツがいまだに影響を与え続けていることに驚かれるかもしれませんが、事実現在も中国人インバウンド客には北海道は人気のエリアでもあり、スキー・スノーボードのようなウィンタースポーツの人気の助長まで行うような状況になっています。

一度でもメディアコンテンツ内で強力なタッチポイントを作ることができてしまえば、身内の口コミやSNSの情報などが元となり次々と同じプランに続いていくのは、爆買いが産まれたプロセスとまったく同じで、何よりこういった所からブランディングを行っていくことは非常に可能性が高いことが容易に想像できると思います。

 

今までの日本メーカー企業の「対中国人に向けたブランディング」は、品質依存型で「良い物を作れば勝手に買っていってくれる」といったものが中心になっていました。

 

それゆえインバウンド客に向けた商品群に見られるのは各社同じように、

  • 日本製
  • 安心、安全
  • 匠の技術
  • 高いコストパフォーマンス

といった横並びのキャッチコピーを掲げてきた訳です。

 

しかし数年前と異なり、「買えない物はないと言っても過言ではない」状況の中国国内ECサイトや、膨大なネットの情報。さらに日本製品の良し悪しを見抜く審美眼が備わってきている中国の消費者に対して、もはや「品質が良ければ高くても買う」という時代は終わりを告げており、安心・安全・信頼性は最低限で、「その商品を選ぶ=口コミなどで裏付けがされているという価値やコンテンツによってストーリーを体験できる価値」に対してお金を払う。という時代に来ていると言える訳です。

 

つまり日本ではそこそこ知名度もあり売れているので、中国でも売れるだろうという妄想は捨てて、プロダクトプレイスメントなどの手法でどう中国人消費者の心を掴むのかを考え、売る方法を考えていくのは競合との差別化においては非常に有効性が高いと言えると思います。

 

その展開案の一例として、日本国内で制作したメディアコンテンツを中国に持ち込む方法も考えられますが、実は日本国内ではほとんど知られていないことながら最近は日本をロケ地として撮影する」映像が非常に増えています。

 

映画やテレビドラマだけでなく、大手の動画サイトで放映されるネットドラマが非常に多く、以下もその一例です。

全日空 中国のネットPR動画

http://www.xinpianchang.com/a40178?from=timeline&isappinstalled=0

※当社PRチームが日本国内ロケにおいて一部業務をサポート。

※日本でロケをしている映像の参考として。

 

ネットドラマと言っても、ヒットすると日本国内のドラマ以上の視聴者を集めることがあり、それは度々起こっていることでもあります。2016年の3月頃には中国の動画サイト大手「愛奇芸(アイチーイー)」が独占配信した「太陽の末裔」という韓国ドラマが有料にも関わらず1話平均2億回以上の閲覧数を記録して話題にもなりました。

 

つまり、こういった中国産のメディアコンテンツに対してプロダクトプレイスメントによるプロモーションを行う事は、インバウンドでもECでも非常に可能性があことが良く分かります

 

 

直近の中国人観光客は爆買いが落ち着き、モノ消費からコト消費に変わってきていると言われています。

 

しかしコト消費に変わったからといって、日本に来たときに買い物をしない訳ではありませんし、中国の越境EC市場で日本の製品の人気が落ちている訳でもありません。

今後消費の中心になっていく中国の若者たちの価値観を捉え、ストーリーの中で商品を知ってもらうためにメディアとどう向き合うのか、まさに真剣に考えなければならない時代になってきたことはもはや疑いようがありません。