中国ECユーザーのコミュニケーション量
ご存知の方であれば当たり前の話ではありますが、中国のEC市場ではユーザーとのリレーションやコミュニケーション量が非常に多くなる傾向があります。
最近は日本でもECサイトだけでなく企業サイトやメディアなどでもリアルタイムにメッセージを送受信して問い合わせ対応したり使い方のヘルプを行ったり、再訪したお客様に対してクロージング(契約成立)をかけるケースが増えています。
※機能を導入しているサイトの一例
ECのミカタ https://www.ecnomikata.com/
株式会社アデランス https://www.aderans.co.jp/mens/
商品を陳列して丁寧な説明文を書いて「お客様を待つ」という従来のECサイトの基本構造は、現時点ですでに大きな進化をしており、リアルの実店舗と同じように接客という概念が加わっている訳です。
今後もチャットボットやAIなど様々なテクノロジーがこのようなお客様とのリレーションやコミュニケーションを最適化・自動化して、聞きたいことがあったら問い合わせフォームにメッセージを送ってメールの返信を待つという旧来の状況からリアルタイムにソリューションが提供されるようになっていきます。
しかし中国ではこのような発想はEC初期段階から当たり前のように存在しており、このベクトルにおいては「日本以上に中国のECは進んでいる」と言わざるを得ない部分がありました。
この進化の違いについては大別すると2つの理由があると考えられています。
1つ目は日本側の理由で、日本の事業者は市場の声を重視するよりも技術などの商品の良さを武器にする傾向が強く、丁寧に商品の説明をしておけばお客さんは買ってくれる。という発想が強い点にあります。
2つ目は中国側の理由で、本コラムでは何度か書かせて頂いていますが、そもそも中国の消費者心理で購入前に「騙されないようにしなければいけない」という発想が働くため、どんなに丁寧な説明を書いていても事前に問い合わせをして確認したくなる傾向が強い点にあります。
これらの理由から中国のEC黎明期からリアルタイムでECサイトとお客様の間でメッセンジャーなどを用いてリレーションを計る文化が生まれてきました。
実際にTaobaoやTmallなどを運営しているアリババ社も、Taobaoの店舗オーナー向けにお客様とリアルタイムでコミュニケーションが取れる独自のメッセンジャー(阿里旺旺/アーリーワンワン http://wangwang.taobao.com/ )を提供しており、他のECプラットフォームとは大きな差別化に繋がってきた機能であると言えます。
アリババ社がこの機能を導入したことで、当時シェア争いをしていた米eBay社との差を作る1つの理由になったと言われています。店舗と消費者のリアルタイムのやり取りを許していくと、プラットフォーム手数料が徴収できない形で取引が行われる懸念をしたeBayにはこの機能を導入する意思決定は難しかったと思いますが、そもそも「話し好き」で「価格交渉が当たり前」で「自分がして欲しい事を明確に伝える」国民性があり、(前述の通り)相手の品定めをしなければいけない。などの理由を考えれば中国では必須の機能だった訳です。
つまりここまで読んで頂ければ、日本ではCVRを少しでも高く出来るように導入され始めた新しいテクノロジーが、中国ではすでに当たり前だという事がお分かり頂けたと思います。
これにより中国ECでの販売においてはお客様とのリレーションやコミュニケーションにかけるコストが大きくならざるを得ませんし、そもそもここにきちんとコストを投下しなければ、他社とは戦えない訳です。
それぞれの国の文化的背景を読み解きながらECの販売戦略を立てていくことが重要だと思います。