中国の農村部とECについての新実態
中国では都市部と農村部の収入格差がかなり大きい事が、最近になって少しずつ知られるようになりました。日本の場合、農村部でも道路は舗装され、衣食住の生活環境が一定の水準を超えているため、中国でもそのようなイメージを持たれるケースもありますが実態はまったく違います。
数値上の話で言うと、今の中国には約3000万人の富裕層/5~6億人の中間所得層/7~8億の下層庶民で形成されていると言われています(出典:近藤大介著/中国経済「1100兆円破綻」の衝撃)
当然その下層庶民のほとんどは農村部で生活している訳ですが、その生活環境は日本で想像するよりも相当過酷な環境である事は間違いありません。
毛沢東時代(1950年頃)から、何度も食糧難を引き起こしていた中国の安定的な国家運用のために都市部と農村部の戸籍を完全に分け、いわゆる「農民の子は農民」として、全国民の居住地から職業までを定め安定的な国家発展をはかってきました。
その後、鄧小平の改革開放以降は農民が都市部に出稼ぎに来る事を黙認し始めるなど、公式/非公式問わなければ少しずつ規制の緩和がされてきている部分もありますが、現実的には前述通り生活そのものの格差が大きいのが実態です。
これついては福島香織さんの下記のルポが非常に参考になりますので、ご興味がある方はぜひご一読されてみてください。
潜入ルポ 中国の女 エイズ売春婦から大富豪まで (文春文庫)
しかし農村部に向けた規制緩和は中国という国家の伸びしろでもあり、中央政府も「第13次5カ年計画」でも戸籍制度に対する規制緩和を含め、農村部の生活水準を上げていく事を明記しています。
それらの動きの成果なのか、2016年のW11のECセールイベントではアリババ社は1200億元を超える売上を記録していますが(当社コラム:今年も拡大!2016年W11セールについての所感と面白ニュース参照)、「農村タオバオ」もかなりの貢献があったという報道もなされています。
「農村タオバオ」は、「タオバオ(淘宝)」を運営するアリババグループが、農村インターネット通販市場をターゲットに2014年11月に始動した新サービスです。専用サイトのトップページには、日用品やアパレル用品と並んで、農機や肥料等の農業用品のカテゴリが存在しています。 農村ネット通販市場規模は、2014年に1800億元(約3兆3400億円)に達し、2016年には4600億元(約8兆7400億円)を突破する見込みです。
パソコンなどを使いこなせない高齢者などもターゲットにし、EC型だけではなく、農村部に実店舗を構え、そこで顧客の注文を聞き、場合によっては他の商品のレコメンドまで行い、取り寄せを行った上でその実店舗で渡すと言う、エスクローサービスまでを含んだサービスとなっています。もはや中国の広大な土地に広がるコンビニエンスストアと呼んでも過言ではないと思います。
これにより都市部では一部飽和状態になっているカテゴリの商品でも、農村部ではまだまだチャンスが見込めると思います。また、農業用品の市場としても非常に魅力的であると思われます。
当然「Made in Japan」で「安価」「高品質」の商品であれば、大きな伸びしろの中国農村部でも人気を得られると考えられますので、「農村タオバオ」を今後のEC事業におけるターゲットとしてお考え頂くのも1アイデアだと思います。