中国のEC市場における新たな問題とは?

前年度比30%の成長を見せる中国のEC市場ですが、爆買いならぬ、爆売れが起こる裏側で新たな問題も浮上し始めています。

◎中国EC市場における最大のセール「W11」

今年も間もなくW11セールを間近に迎える事になりました。

阿里巴巴(アリババ)グループが毎年11月11日「光棍節(通称:双十一/W11/独身の日)」に行う、「天猫/旧:淘宝商城(Tmall)」の大セールや、CtoCのマーケットプレイスである「淘宝網(taobao)」のショップもそれに乗っかる形で行われる24時間限定の年間最大級のセールイベントについては、ここの所日本でも良く知られるようになってきました。

 

このセールイベントは2009年から始まっており、昨年ですでに7回実施されています。

2009年 約5200万元(1円=13.0元/約68億円)

2010年 約9.3億元(1円=12.4元/約115億円)

2011年 約33.6億元(1円=12.2元/約410億円)

2012年 約191億元(1円=12.8元/約2445億円)

2013年 約362億元(1円=16.3元/約5900億円)

2014年 約571億元(1円=18.8元/約1兆700億円)

2015年 約921億元(1円=19.5元/約1兆8000億円)

http://www.alibabagroup.com/cn/news/press

この通り、7年で実に1000倍以上の成長を見せています。

 

当然セールは年にこれ1度ではなくて、中国の建国記念日である「国慶節」に合わせたセールも開催していますし、クリスマスや年末年始もセールもあります。

前後にそれだけセールが実施されているにも関わらず、このたった1日の売上を見ると今更ながら中国EC市場の規模感に驚かされます。

 

◎2015年に顕在化された中国ECの新たな問題

ここ2~3年ほど、W11直後になると物流がオーバーフローを起こし、通常の発送についても多大な影響が起こっていました。つまり平常時であれば1~2日で到着していた国内輸送が2週間~3週間かかるようになってしまう、という具合です。

そのため、毎年物流各社共いかにフローをスムーズにするかという点において最優先の課題として人的リソースの確保やシステムの増強など様々な対策を打っていますが、正直ピーク時と非ピーク時の差が大きすぎるため、完全に解決するのは難しいのではないかと思われます。

ですので、この時期に「生もの」の輸送はとても危険だと言う事も覚えておくと良いかと思います。

 

しかし、2015年のW11で顕在化した問題はまた別の所にあります。

 

24時間で1兆8000億円という華々しいニュースの陰で、日本では報道を見かけた事がありませんが、返品率が40%を超えていたという恐ろしいデータがあります。

つまり実質、成長しているようで今年のキャンペーンはむしろ前年度を下回っていたともいえる結果だった訳です。

 

ただこれは中国のEC市場の鈍化ではありません。

何故なら「消費者はきちんと買う気があった」からなのです。

 

問題は、増えすぎたEC店舗と、この最大のセールを前にした過当な競争が産んだ弊害とも言えます。

購入者たちの元に届いた商品が「サイトの画像とまったく違う」「質が悪すぎる」「明らかに偽物」という、サービスレベルとも言えないような質の低い、店舗側の問題によって引き起こされた問題だったというのが真実です。

通常市場の競争環境が強くなるとサービスが向上していくものだと思いますが、このセールの波に乗って瞬間風速的に目の前の売上だけ出れば良い、と思っている店舗がまだまだ淘汰されずに多く残っている状況なのです。

 

逆に言うと、きちんとした梱包やサンクスカード、アフターサポートなどがしっかりしているという事は新たなお客様を獲得する可能性があると言えます。

日本のおもてなしのサービス精神は、今後さらに中国のEC市場においても光を放っていくのは間違いありません。